TOPへTOPへ

肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)

四十肩・五十肩とは

「肩関節周囲炎」というのが、一般的に「四十肩・五十肩」と呼ばれる症状の正式な名称です。この症状は40代で起こる場合を「四十肩」、50代で現れる場合を「五十肩」と呼ばれることはありますが医学的にこのような疾患の呼び方はあまりしません。この症状の発症は人口全体の2%から5%にみられ、特に40代から60代の女性に多くみられます。糖尿病患者では、そうでない方よりも五十肩のリスクが高い傾向があり、10%から20%の割合で併発すると言われています。
突然の痛みが特徴でその原因ははっきりと特定されていないことが一般的ですが、来院して頂いた際に肩関節まわりの可動域制限やかたさ、関節の動きの特徴、体幹から下半身までの特徴をチェックし、まわりの異常から肩に負担がかかっていることが分かることが多々あります。そのためまわりも含めて調整をしていくことで治癒を早め再発を防いでいくことができます。一般的に治療には時間を要することが多いです。当院ではリハビリや投薬に加え、肩の動きがなかなか改善しない難治例には、エコー下にどこの動きが悪いのかチェックしハイドロリリースやヒアルロン酸注射などを行います。一般的には原因を突き詰めずに肩峰下滑液包という袋のある部分や肩甲上腕関節にとりあえず注射をされることが多いですが、昨今の知見によりエコーで動きが悪い部位を特定したり、炎症が残っている部位が可視化できるため、先ほどの肩峰下滑液包や肩甲上腕関節だけではなく、肩甲上神経や腋窩神経などの神経、癒着していて滑走が悪い筋膜などに的確にピンポイントでハイドロリリースが出来るようになりました。

肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)の主な症状

  • 肩関節の痛み
  • 肩を動かすと痛い
  • 可動域の制限がある(肩が動かしにくい)
  • 夜間になると肩が痛い

肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)の病期

一般的に「急性期」「慢性期」「回復期」の3つの段階に分けられます。適切な治療を施すことで改善の兆しが見えますが、症状の落ち着きまでには、通常半年から1年の期間が必要とされています。

急性期

初期症状は通常、痛みや不快感で、発症後の2週間から1カ月ほど続きます。夜間に痛みが強まるため、不眠症になりやすく、冷やすことや動かさないことが痛みを増すので注意が必要です。肩を保温したり、冷やさないように工夫も有効であることがあります。痛みが強い場合は安静が必要ですが、安静期間が長すぎると肩がかたくなりリハビリテーションに時間がかかることがあるため適切な動きも重要です。

慢性期

進行すると、肩の可動域が制限されていきます。この段階は「凍結期(frozen shoulder)」と呼ばれ、肩が固まるため痛みや夜間の不快感は治まるものの、拘縮(関節が硬くなり動きが制限される状態)が現れます。特に、肩を外に上げる動作(外転)や後ろに動かす動作(伸展や内旋)に制限が出ることがよくみられます。この期間は3つの段階の中で肩の可動域が最も制限されるため、日常生活に大きな影響を及ぼす時期です。効果的な理学療法と場合によってはハイドロリリース、注射などが必要とされます。

回復期

慢性期とは異なり、関節の可動域が回復してくる段階で痛みもなくなっていることが多いです。

肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)の検査・診断

肩の痛みは肩関節周囲炎だけでなく、腱板断裂や上腕二頭筋腱炎、リウマチ、肩峰下滑液包炎、石灰性腱炎、肩関節炎、肩峰下インピンジメント症候群、変形性関節症などの疾患でも現れます。そのため、正確な鑑別診断が非常に重要です。肩関節はほとんどの方でレントゲンで異常は認められません。
当院では超音波(エコー)検査を行っており、肩関節はレントゲンでは見えない多くの筋肉や靭帯から構成されているためエコーは特に有効です。レントゲンだけでは肩関節周囲炎と判断されがちで、漠然とした治療が行われることがあります。超音波検査により、二頭筋腱周囲や肩峰下滑液包、肩関節腔、腱板などをより精緻に検査し、適切な治療を提供します。また、MRIなどの検査も提携医療機関と連携して実施・診断を行っています。

肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)の治療

投薬

急性期には、内服または外用の消炎鎮痛剤を用いて治療を行います。急性期では炎症が強いため、通常の消炎鎮痛薬が効果的です。ただし、肩関節周囲炎の一部は、通常の消炎鎮痛剤よりも神経痛治療薬などが有効なこともあります。症状を考慮して適切な薬を処方いたします。特に急性期の痛みが強い場合は、まずは痛みの緩和に焦点を当てます。

注射・サイレントマニプュレーション

肩関節や肩峰下滑液包、二頭筋腱周囲に、ハイドロリリース、ヒアルロン酸、局所麻酔薬、ステロイド鎮痛剤などを患部や関節内などに注射する治療を行います。また、凍結期の拘縮に対してはサイレントマニプュレーションを行うことがあります。これは麻酔をして痛みを感じないようにした状態で徒手的に可動域を上げる治療ですが、骨折などの合併症も考えられるため高次機能病院と連携しながらご提案することになります。

リハビリテーション

痛みが強い場合には、日常生活での動作指導や姿勢の改善を行います。また、肩関節の可動域を拡げるためのトレーニングも行います。再発を防ぐためのリハビリテーションも重要です。肩関節周囲炎の患者様には、肩関節に不要な負担をかける姿勢や動作の癖が見られることがあります。そのため、姿勢や動作の改善、可動域訓練を通じて再発予防のサポートを行います。